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不登校や「動けない」状態の背景にあるもの

「学校に行けない子ども」と「働けなくなった大人」。一見するとまったく別の問題のように思えるかもしれません。

しかし、長年不登校支援や就労支援の現場に携わってきた私たちは、その根底にある本質は非常に似ていると感じています。

  • 朝起きられない
  • 人と会うのが怖い
  • 集団になじめない
  • 外に出ようとすると強い不安や動悸がする
  • 「行かなければ」と思うほど体が動かない

精神障害や体調不良を抱え、こうした状態に陥ると「自分が弱いからだ」「甘えているだけだ」と自分を責めてしまいがちです。

ですが、これは決して怠惰や甘えではありません。脳と心が「危険状態」を察知し、身を守ろうとしている SOS のサインなのです。

本記事では、不登校と「働けない状態」の共通点を脳科学・心理学の視点から紐解きながら、再び社会とつながるためのステップについて解説します。

不登校と「働けない」状態に共通するメカニズム

子どもにとっての主たる社会は「学校」であり、大人にとっての主たる社会は「職場」です。

対象が学校か会社かという違いがあるだけで、「心身の機能が限界を迎え、社会参加が困難になる」という背景には共通する仕組みが存在します。

実際に就労支援の現場でも、精神障害や過度のストレスを経験された方から次のようなお悩みを多く伺います。

  • 「また働けるようになる気がしない」
  • 「朝、体が鉛のように重くて起きられない」
  • 「人間関係を想像するだけで吐き気がする」
  • 「復職や再就職が怖くて一歩を踏み出せない」

これらは、不登校のお子さんが抱える「学校に行けない苦しみ」と共通するメカニズムで起きていると考えられます。

マズローの「5段階欲求説」から見る「働けない理由」

心理学者マズローは、人間の欲求を5つの階層で説明しました。その土台近く(第2段階)にあるのが「安全・安心の欲求」です。

人は、「ここは自分にとって安全だ」「否定されない」という安心感があって初めて、職場や集団の中で力を発揮できるようになります。

逆に、以下のような環境に長期間さらされると、「安全・安心」の土台が崩れてしまいます。

  • 職場や家庭内での強い心理的プレッシャー
  • 人格や努力を否定され続ける環境
  • ハラスメントや過剰なストレス

安全基地を失った脳は常に「危険信号」を出し続けるため、結果として「会社に行けない」「働くことが怖い」という防衛反応が引き起こされるのです。

「甘え」ではなく、脳の防衛反応

強いストレスやトラウマが長く続くと、脳の働きに変化が生じます。

脳科学の視点で見ると、恐怖や不安を司る「扁桃体(へんとうたい)」が過剰に過敏化する一方で、思考や意欲を司る「前頭前野(ぜんとうぜんや)」の機能が低下しやすくなります。

これにより、以下のような状態が引き起こされます。

  • 理屈では「働かなきゃ」と分かっていても体が動かない
  • 思考がまとまらず、判断力が低下する
  • 人の視線や声に対して過剰に恐怖を感じる

つまり「働けない状態」とは、意志の弱さではなく、「これ以上ダメージを受けないために脳がブレーキをかけている状態」なのです。

不登校支援のデータからも見えた「共通点」

どんぐりの会の関連会社では不登校支援において、ご家族の環境チェックや、精神状態判定機器(メンタルチェッカー)を用いた心理・神経状態の可視化を行っています。

測定を行うと、不登校や社会参加につまずいている方に共通して「強い緊張」「抑圧傾向」「疑心(人間不信)」「低い外向性」などの反応が見られることがあります。

幼少期の環境や過去の職場環境で心理的圧迫・過干渉・否定的な関わりを受け続けると、人間は「自分を保護するための壁」を厚く作ります。

この構造が固定化すると、大人になってから適応障害、うつ病、復職困難、ひきこもりといった形で表面化するケースは決して少なくありません。

必要なのは「無理な我慢」ではなく「脳と環境の休息」

心が限界を迎えている時に、履歴書の書き方や面接の練習だけを行っても、根本的な解決にはなりません。脳が危険信号を出し続けている状態では、働くスタートラインに立つこと自体が激しい苦痛を伴うからです。

だからこそ、まずは「脳と心が安全だと感じられる環境」を取り戻すことが最優先となります。

どんぐりの会では、医療機関との連携のもと、必要に応じて磁気で脳の働きにアプローチする「TMS治療」やメンタル状態の可視化を取り入れ、科学的な視点からも「働ける脳状態」へ整えるサポートを行っています。

※TMS治療の効果には個人差があります。検討される際は必ず医師にご相談ください。

一歩ずつ社会へ戻るための選択肢|就労移行支援・就労継続支援B型

「安全・安心」を取り戻し、自分のペースで社会参加を目指すための具体的な仕組みとして、福祉サービス(障害福祉サービス)があります。

1. 就労継続支援B型(まずは自分のペースを取り戻したい方へ)

いきなり週5日・フルタイムで働くのが難しい方や、体調に波がある方のための場所です。雇用契約を結ばずに、軽作業などを通して「朝決まった時間に起きる」「無理のない範囲で人と関わる」というリハビリから始めることができます。

2. 就労就労移行支援(一般企業への就職・復職を目指したい方へ)

体調が安定してきた方が、スキルアップや就職活動のサポートを受ける場所です。ストレスコントロールやPCスキルなどを学びながら、「自分に合った働き方」を専門スタッフと一緒に模索していきます。

どちらの支援も、「気合いで頑張る」場所ではありません。「傷ついた脳と心を休ませつつ、少しずつ安全な環境で社会に慣れていくための安全基地」です。

「働けない」は人生の終わりではありません

「朝起きられない」「働けない」「社会が怖い」と悩んでいる方は、これまで十分に一人で戦い、限界まで頑張ってきた方々です。自分を責める必要はどこにもありません。

大切なのは、気合いや根性で乗り切ることではなく、「安全・安心な環境で、脳と心を整えていくこと」です。

どんぐりの会では、あなたの体調やペースに合わせたサポート体制をご用意しています。「まずは自分の状態を知りたい」「どんな場所か見てみたい」というご相談からで構いません。

一人で抱え込まず、ぜひお気軽に最初の一歩をご相談ください。